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タイムドメインスピーカーの自作記録 (2010年1月24日)




音質について その三 : 周波数特性の計測

以前測定したマイク(AT9752)の周波数特性が疑わしいので、再度計測しなおし 内容を差し替えました。 以前の記事及びデータはここです。

感覚だけでは仕方ないので 実際に周波数特性を計測してみました。 使ったマイクは、audio-technica の AT9752 です。 メーカーの規格では、「周波数特性:100〜12,000Hz」となっていますが、実際の周波数特性は不明です。 周波数特性のわからないマイク(AT9752)を使って どうやってより正確にスピーカーの周波数特性を計測したら良いかと考えて、最初は以下の様にしました。

  1. SONY MDR-CD-900ST の特性を基準とする、
  2. SONY MDR-CD-900ST のホワイトノイズの出力をマイク(AT9752)で計測して その特性をマイク(AT9752)の周波数特性とみなす、
  3. スピーカーの出力特性(ホワイトノイズの出力)をマイク(AT9752)で計測する、
  4. 3.のスピーカーの周波数特性から2.のマイク(AT9752)の周波数特性を差し引く。
ホワイトノイズは、FL Studio を使って発生させました。 データ及び結果はここです。

しかし、マイク(AT9752)の周波数特性を何度か測定しなおしているうちに、ヘッドホン MDR-CD-900ST とマイク(AT9752)との距離によって 得られる周波数特性が変わることに気がつき、前回の解析方法と結果が疑わしく思えてきました。

もっともらしいマイク(AT9752)の周波数特性を得るにはスピーカーを使用する方法ではだめだと思い、なんとか直接的にホワイトノイズを発生する方法を考えたところ・・・ありました、紙同士を擦り合わせるのです。 紙と紙を擦るとシャラシャラと音がしますね。 あれはかなり良いホワイトノイズになっています。

で、新しい方法は

  1. 紙同士を擦り合わせた音をマイク(AT9752)で録音して その特性をマイク(AT9752)の周波数特性とみなす、
  2. スピーカーの出力特性(ホワイトノイズの出力)をマイク(AT9752)で計測する、
  3. 2.のスピーカーの周波数特性から1.のマイク(AT9752)の周波数特性を差し引く
です。

実際に録音した紙同士の擦り合わせの音の波形はこんな感じです。 録音した音は小さかったので、波形編集ソフトを使って 40dB程増幅してあります。

波状になっているのは、手で紙を擦り合わせる時 丸く円を書くようにしたからです。 この波形をそのまま使ってもよいのですが、50Hz以下の低周波を取り除いて ちょっときれいにします。

大きな波状のうねり(?)は無くなりましたが、波形の振幅が波打っています。 これは円状に擦ったため 音が出ている部分がマイクに近づいたり離れたりしたためです。 これはまぁ仕方ないので、この波形を使うことにしました。

実際は、擦り方や紙を変えたりして 上記のような波形を8回計測しました。 下図がそれ等の周波数特性です。

気になる部分が幾つかありますが、顕著なのは 50Hz、100Hz、120Hz、150Hz、200Hz、250Hzにピークがあることです。 これは明らかに計測に使用したPCの電源が原因とおもわれるノイズです。 スピーカーからの音を計測した場合、音が大きいので このノイズは無視できるのですが、紙を擦り合わせる音は小さいので、波形編集ソフトで増幅した時 同時にこのノイズも増幅してしまったと考えられます。

もう一つ気になる点は、3kHz、7kHz、9kHzに大きな落ち込みがあることです。 以降のデータを見てもらうと分かりますが、3kHzの落ち込みは マイクの特性と考えて良いと思います。

14kHzに最後の落ち込みがあった後、それ以上の周波数では特性が急激に落ちています。 このマイク(AT9752)の規格上の上限は12kHzですので、まぁこんなものだと思われます。

最終的に使用するマイク(AT9752)の周波数特性は、上記8つの周波数特性を平均した後、50Hz、100Hz、120Hz、150Hz、200Hz、250Hzのピークを手作業で取り除くことにしました。

最終的なマイク(AT9752)の周波数特性は下図のとおりです。 がホワイトノイズの特性。 そして、が最終的に使用するマイク(AT9752)の周波数特性、が 50Hz、100Hz、120Hz、150Hz、200Hz、250Hzのピークを取り除く前の周波数特性です。

最終的に使用するマイク(AT9752)の周波数特性(線)では、300Hz以下の実データを無視し、フラットにしました。 理由は、上図のオリジナルの周波数特性(線)では300Hz以下の特性が上がっているように見えますが、これは50Hzの大きなピークの裾だろと考えたからです。 100Hz、120Hz、150Hz、200Hz、250Hzのピークはその裾の上に乗っている感じになっています。 実際の300Hz以下の特性は上がり傾向なのか下がり傾向なのか不明ですが、少し荒っぽいのですが、フラットにしてしまっても大した問題では無いことが 以下のデータを見てもらうと分かると思います。 後でまたマイク(AT9752)の良い周波数特性データを取得できたら データの差し替えを行いたいと思っています。

続いて、マイク(AT9752)の特性を差し引いた効果の試験です。 がマイク(AT9752)の特性、がスピーカー(吸音材無し)の出力、が補正後の特性です。 マイク(AT9752)の特性が信頼できる70Hzから14kHzまでをプロットしてあります。 3kHzの落ち込みが綺麗に補正されています。

6.5kHzあたりの落ち込み部分はそのまま残っています。 これはエンクロージャー(アルミ管)によるものです。 下図のがエンクロージャー(アルミ管)に入れずに測定した周波数特性、がエンクロージャー(アルミ管)に入れて(吸音材無し)測定した周波数特性です。 エンクロージャー(アルミ管)に入れない場合、6.5kHzの落ち込みがありません。

以下が 吸音材を組み合わせて使用した場合のスピーカーの特性の比較です。 フエルトの吸音効果のグラフは、フエルトのみの周波数特性から吸音材無しの周波数特性を差し引いたものです。 コーンの吸音効果のグラフは、フエルトとコーンの周波数特性からフエルトのみの周波数特性を差し引いたものです。 フロアーマットの吸音効果のグラフは、フエルトとフロアーマットの周波数特性からフエルトのみの周波数特性を差し引いたものです。

: 吸音材無し
: フエルトのみ
フエルトの吸音効果

: フエルトのみ
: フエルトとコーン
コーンの吸音効果

: フエルトのみ
: フエルトとフロアーマット
フロアーマットの吸音効果

: フエルトとコーン
: フエルトとフロアーマット
: コーンの吸音効果
: フロアーマットの吸音効果

吸音材無しの特性を ぱっとみたところでは、

  • 500Hz〜2kHzくらいが盛り上がっている、
  • 500Hzに鋭いピークがある、
  • 2kHz 上から高音域にかけて徐々に落ちている、
  • 6.5kHz、8kHz、9kHz、12kHz あたりに鋭い落ち込みがある
のが分かります。

フエルトを入れると筒臭さがほとんどなくなったので、500Hzの鋭いピークが筒臭さの主原因だったのだと思われます。 これは筒の長さが35cmなのに起因していると考えられます。

聞いた感じのとおり 高音域の落ち込みが激しいですね。 吸音材では対処できそうにないので グラフィックイコライザに活躍してもらいます。 6.5kHz, 8kHz、9kHz、12kHz あたりの鋭い落ち込みは、グラフィックイコライザの解像度が高くないので 対処できそうに無いです。

I.(フエルト) の効果ですが、聞いた感覚では「絶大」だったのですが、実際に測定してみると そうでもないですね。(笑) 500Hzのピークが消えたのはラッキーですね。 その代わり、7kHz以上が少し落ちてしまっています。

I.(フエルト) と II.(コーン) を組み合わせた場合、不思議と7kHz 以上の音域の落ち込みが無くなっています。 低音の鮮やかさが無くなった様に聞こえた原因は不明ですね。

I.(フエルト) と III.(フロアマット) を組み合わせた場合も 7kHz 以上の音域の落ち込みが無くなっています。 周波数特性で見た限りは分かりませんが、II.(コーン) より III.(フロアマット) を使用した方が 私好みの音になっています。

吸音材では無いですが、アルミ管と天板の間に挟んだ吸振パッドの置き方を変えてみました。 上記のデータはすべて 写真にあるように帯状に全体に置いたものですが、帯状ではなく 5x5mmくらいの点状の吸振パッドを4点のみ置いてみました。 アルミ管と天板の間には2mmくらいの隙間が空いています。 下図が フエルトとフロアマットを使用した場合の周波数特性比較です。 が帯状に全体に置いた場合、が 4点のみで支持した場合です。 500Hz以下の低音域が落ちてしまっていますが、代わりにエンクロージャー(アルミ管)のために起こっていた6.5kHzの落ち込みが消えています。




結論

周波数特性の計測のデータを差し替えたので、(以前と大意は相違ないのですが)内容を一部差し替えました。 以前の記事及びデータはここです。

結果的には、処女作にしては 良いスピーカーができたのではないかと思っています。 吸音材は色々試しましたが、結局

  • I.(フエルト) と III.(フロアマット) を使い、
  • 吸振パッドは4点のみ置いて、
  • グラフィックイコライザ100Hzあたりの特性を持ち上げ、
  • 500〜2kHzの山を押さえ気味にし、
  • 3kHz以上の高音域を持ち上げる
ことにしました。 全体的にフラットな特性が「良い音」という訳ではないのですが、DTMのミキシングに使う目的があるのでそうしています。

低音域の力強さと艶やかさは すばらしいです。 映画を見ていてヘリコプターが飛んでくる時の地を這うような重低音の臨場感はびっくりするくらいでした。 サラウンドで無いのが惜しいです。(爆) また、J-POPを聞いている時等でも、低音の響きが心地よくてうっとりします。(笑)

音場はクリアで言うこと無いです。 Jazz 等を聞いていると 楽器の位置がはっきり分かります。 今まで聞こえていなかった効果音も聞こえるようになって、急に台所がある方から変な音がしたりして 何かあったのかと見に行ったくらいです。(笑)

高音域の落ち込みについての補足ですが、実際はグラフで見たほど悪い音では無いです。(爆) TV等の通常のソースを聞いている限り 殆ど影響ありません。(笑) クラシックやJ-POPなどを聞いても それほど違和感は無いです。 実際グラフィックイコライザの機能がスルー(実質オフ)になっているのに気づかずに 1時間ほど「いい音だぁ〜」って思いながら聞き入っていた程ですから。(爆) 私は、人の喋っている時の空気の摩擦音やハイハット音等 高音のシャリシャリという音が好きなので、無理に高音域を上げているという感じです。

私が高音域を上げたがる理由には もう一つあります。 それは、「高音は無指向的である」ということです。 高い音は どちらから聞こえてくるか分かりづらいです。 このため、高音が多いと 全体的に包まれたような雰囲気になります。 最初に書いたように、今回作ったスピーカーの様に上向きのスピーカーの場合 音の広がり感があって包まれたような音場を作り上げてくれます。 高音域を上げることによって その効果を引き立たせることが出来るのです。 ALI PROJECT の「Aniversary of Angel」、「夢のあとに」なんかを聞くと、もう天国にいるような感じがします。(爆)

実際の聞こえ方は部屋の構造等に大きく依存します。 周波数特性の計測は、スピーカーの直ぐ傍にマイク(AT9752)を置いて計測していますので、部屋の影響による音の変化は計測されていません。 逆に、実際に聞く時は、上記のグラフどおりの特性にはなっていないということです。 当然ながら、実際の音響環境の中で 自分が「良い」と思う音に設定するのがベストですね。